2011年2月28日月曜日

#0057 『日本の選択』

『日本の選択』

日本のバブル崩壊を予測した『日はまた沈む』の著者、ビル・エモットと、日本経済新聞社調査によるマーケット・アナリスト・ランキングで5年連続1位(1992~1996年)のピーター・タスカが、日本経済の今後を予測した一冊。

資本へのリターンが大きく、労働者へのリターンが小さいため、企業収益は好調なのに、個人消費が弱くなってしまっている現状、国家レベルでのカネの無駄遣い、グローバル化への遅れなど、現在の日本が抱える問題を、歯に衣着せずに説いています。さらに、今後、日本が進むべき道についても議論しており、出生率の低下に対する政府の役割や、対アメリカ/アジアの外交政策、東京が国際的な金融センターになるための条件など、さまざまな点について議論が展開されています。議論自体は興味深い内容で、現状把握、今後の経済社会の見通しという点ではじつに役に立ちます。

ただ、著者の一人が言っているように、「基準をどこに置くかということは、ひじょうに重要」。
その点、本書の基準は経済やグローバル化という点に偏っており、「人間」や「幸福」、「地球」といった視点は少なかったように思います。
家族が崩壊し、モラルの低下が起こり、地球環境が経済成長を抑制し始めた現在の日本には、より広い視野での議論が求められている、そんな気がします。

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日本の景気回復のメカニズムを見てみれば、主要な原動力となったのはあきらかに企業部門です。まず輸出が需要を引っ張り、続いて設備投資が伸び、ついには日銀が設備投資バブルを憂うレベルにまで達しました。もちろん、現状が設備投資バブルになっているとは思いません。企業収益も高いからです

資本へのリターンは大きく、労働者へのリターンは小さいという構造と、女性や高齢者が労働力として果たす新しい役割が賃金の伸びを抑制するという構造は、今後も変わらないと予想される

日本のカネの無駄な投資には三つのパターンがあります。ひとつは収益も少なく、意味もない公共事業への投資。もうひとつは見返りの小さい、あるいはまったくないようなプロジェクトへの企業の投資。そして最後に、アメリカの資産を法外な値段で購入するような投資

懸念されるのは、設備投資額が上昇している現状のままで経済の次なる世界的減速が起きることです。不況まではいかなくとも、世界経済が減速すれば種々の価格指標がさがりはじめます。円高になれ
ば、特にそうなる可能性は高い

金属や食料部門では、これから供給が増加しはじめるでしょう

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